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di/dY=1.15/500=0.0023・・・LM曲線の傾き
 
di/dY=1.15/500=0.0023・・・LM曲線の傾き
   
===総需要管理政策===
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==総需要管理政策==
 
……IS−LMモデルに政府部門、財政政策と金融政策の効果(乗数)、
 
……IS−LMモデルに政府部門、財政政策と金融政策の効果(乗数)、
   
====政府が存在する場合のIS曲線====
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===政府が存在する場合のIS曲線===
   
 
 総生産=総収入<math>Y=C(Y) + I(i) + G</math>と、
 
 総生産=総収入<math>Y=C(Y) + I(i) + G</math>と、
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<math>S_YdY = I_i di + dG</math>
 
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====政府が存在する場合のLM曲線====
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===政府が存在する場合のLM曲線===
   
 
これは政府の存在を考慮しなかったときと変わらない。ただ、偏微分については簡略化した書き方を用いることにしたいので、もう一度書いてみる。
 
これは政府の存在を考慮しなかったときと変わらない。ただ、偏微分については簡略化した書き方を用いることにしたいので、もう一度書いてみる。
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<math>L_YdY + L_i di = \frac{dM}{p}</math>
 
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====政府が存在する場合のIS曲線、LM曲線(まとめ)====
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===政府が存在する場合のIS曲線、LM曲線(まとめ)===
   
 
これらを整理し、行列表示すると
 
これらを整理し、行列表示すると

2010年3月20日 (土) 08:45時点における版

ケインズ体系

ケインズ経済学

財市場の均衡条件はIS曲線で、貨幣市場の均衡条件はLM曲線で、表される。 財市場と貨幣市場が同時に均衡する産出量と利子率は、IS曲線とLM曲線の交点で示される。

以下では、まず財市場の均衡について考え、ついで貨幣市場の均衡について考え、最後に両者が同時に均衡する条件を考える。

財市場の均衡

消費関数

1国の産出量=所得をYとすると、その国の消費による需要Cは、所得Yの関数である消費関数C(Y)で示される。

消費関数C(Y)の微分は、所得Yが増えた際の消費の変化率を示し、これを限界消費性向と呼ぶ。

限界消費性向は、プラスであり、1より小さい。なんとなれば、

  • 所得が増加すると、消費は増加する(限界消費性向はプラス)が、
  • 所得がするほどには、消費は増加しない。つまり、所得の増加率>消費の増加率である。

上の二つをそれぞれを用いて書くと

この二つをまとめると、次の不等式となる。

 …(1)

貯蓄関数

1国の産出量=所得をYとすると、その国の貯蓄Sは、所得Yから消費Cを差し引いた残りである。

すなわち貯蓄関数S(Y)は、

と表される。

貯蓄関数S(Y)の微分は、所得が増えた際の貯蓄の変化率を示す。これを限界貯蓄性向と呼ぶ。

限界貯蓄性向は、貯蓄関数の両辺をYで微分すると

となり、これと(1)から、次の不等式がなりたつ。

 …(2)

すなわち限界貯蓄性向はプラスで1より小さい。

投資関数

投資Iは、利子率の減少関数である。つまり、

とすると、投資関数の微分は、

 ……(3)

(利子率iが増えると投資Iは減る)

財市場の均衡条件

以上で、財市場に登場するすべての部門の関数が示された。 財市場の均衡条件は、生産量=所得と、消費と投資の和(両者を足したもの)が一致することである。すなわち、

 ……(4)

式(4)と貯蓄関数の定義から、

両辺からC(Y)を引くと

 ……(4’)

すなわち、財市場の均衡条件は、貯蓄と投資の均衡条件と同値である。

IS曲線

IS曲線とは、財市場の均衡をYとiの関係について描いたものである。

財市場の均衡は、貯蓄と投資の均衡条件と同値であったから、

式(4)をYとiについて全微分すると、

 ……(5)

式(5)の両辺をおよびで割ると次の式が導かれる。

 ……(6)


式(2) (限界貯蓄性向はプラスで1より小さい)から、

式(3)(投資関数の微分はマイナス)から、

したがって、式(6)の右辺は (プラス/マイナス)=(マイナス)だから、

(Yを横軸、iを縦軸とするグラフで描くと)IS曲線は負の傾きをもつ、右下がりの曲線となる。

貨幣市場の均衡

実質貨幣供給量

貨幣供給量M、物価水準pとすると、実質貨幣供給量は、 と表すことができる。

貨幣需要関数

貨幣需要Lは、次のような所得Yと利子率iの関数である。

貨幣需要関数の所得Yについての偏微分は、

この式は、所得が増えると貨幣需要は増えることを意味している。

貨幣需要関数の利子率iについての偏微分は、

この式は、利子率が増えると貨幣需要は減ることを意味している。

 なぜそうなるかといえば、利子率が高いと流動性(現金)を手ばなしても債券への投資しようとする=投資が増えるからである。

 ここでは利子は流動性(現金の持つ、いつでも他の商品と高かんできる性質)を手ばなした(儀性にした)対価であると考えられている。逆になにかとくにならなければ、人は流動性を手ばなしたりしない。こうした考えを流動性選好説という。


貨幣市場の均衡条件は、貨幣需要と貨幣供給が一致することであり  …(9)

LM曲線

LM曲線は、貨幣市場(ほんとは債券市場)の均衡をYとiの関係で描いたものである。

式(9)をYとiについて全微分すると

この式について、を右辺に移項し、両辺をで割ると、次の式を得る。

 ……(10)

(所得が増えると貨幣需要は増える)と、 (利子率が増えると貨幣需要は減る)とにより、

式(10)の右辺は = −(マイナス)/(プラス)>0

したがって

よって(Yを横軸、iを縦軸とするグラフで描くと)LM曲線は正の傾きをもつ、右上がりの曲線となる。

マクロ生産関数

新古典派のマクロ生産関数は雇用量Nの関数であり、次のようなものだとされる。

 ただし

しかしケインズはこのFの逆関数を雇用関数として考え、

雇用量Nが産出量を決めるのでなく、一国の所得=総需要Yが雇用量Nを決めるのだと考える、すなわち

「総需要Yが雇用量Nを決める」と考えることは、完全雇用の保証は無いと考えることである。

 つまり財市場の均衡から(労働市場とは無関係に)所得=総需要Yが決まり、それに応じて雇用量(労働市場でみれば労働需要)が決まる、という順序関係がある。

 財市場と貨幣市場の均衡は、こうした順所関係はなく「同時」に決まると(IS−LM体系では)想定されている。

例題2.1

財市場の均衡条件Y=C+I

消費関数C=60+0.8Y

投資関数I=46−200i

貨幣市場の均衡条件L=M/p

貨幣需要関数L=1.15Y−500i

ただしM=560、p=1

(解答)

IS曲線は、財市場の均衡条件Y=C+Iに、消費関数C=60+0.8Y、投資関数I=46−200i

をそれぞれ代入して式を整理することで求められる

Y=(60+0.8Y)+(46−200i)

よって、Y=106+0.8Y−200i

0.2Y=106−200i・・・(1)


LM曲線は貨幣市場の均衡条件L=M/pに、

貨幣需要関数L=1.15Y−500iとM=560、p=1

をそれぞれ代入して、式を整理することで求められる。

L=M/p

1.15Y−500i=560/1

よって1.15Y−500i=560・・・(2)

(1)(2)を連立方程式として解く。

(1)の両辺を5倍して、

Y=530−1000i・・・(1)’

これを(2)に代入して

1.15*(530−1000i)−500i=560

609.5−1150i−500i=560

1650i=49.5

i=0.03

これを(1)’に代入して、Y=530−1000*0.03=530−30=500


また(1)(2)をそれぞれYとiとで全微分すると

0.2Y=106−200i・・・(1)の全微分

0.2dY=−200diから

di/dY=0.2/−200=−0.001・・・IS曲線の傾き


1.15Y−500i=560・・・(2)の全微分

1.15dY−500di=0

di/dY=1.15/500=0.0023・・・LM曲線の傾き

総需要管理政策

……IS−LMモデルに政府部門、財政政策と金融政策の効果(乗数)、

政府が存在する場合のIS曲線

 総生産=総収入と、

 貯蓄関数S(Y)の定義とから、

 

両辺からC(Y)を引くと

 ∴ …政府部門入りの財市場の均衡条件

これを全微分(≡すべての変数で偏微分したものと、すべての変数の微分単位の内積を求める)すると

整理してもう一度書くとこんな感じ。

偏微分を分数で書くのがつらくなってきたので、下添字をつかって簡略化して書くことにしたい。

今の場合だと、SのYについての偏微分、Iのについてiの偏微分をそれぞれ、と書くことにして、

政府が存在する場合のLM曲線

これは政府の存在を考慮しなかったときと変わらない。ただ、偏微分については簡略化した書き方を用いることにしたいので、もう一度書いてみる。

 L(Y,i)=M/p

これをYとiについて全微分する。

同様にLのYについての偏微分、Lのについてiの偏微分をそれぞれ、と書くことにして

貨幣市場の均衡条件L(Y,i)=M/pを全微分すると、

政府が存在する場合のIS曲線、LM曲線(まとめ)

これらを整理し、行列表示すると

逆行列をつかって、所得の変化率dYと利子率の変化率diを導出する形に式を変形すると、

ただしとする。

から、である。

ここで ……貨幣供給量を一定とすると、

両辺をdGで割ると、から

構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \frac{\partial Y}{\partial G} = \frac{L_i}{\Delta} = (-)/(-) >0 } ……財政政策乗数はプラス

つまり、財政支出Gが増加すると総生産は増加する。


また……政府支出は一定とすると、

両辺をで割ると、から

構文解析に失敗 (構文エラー): {\displaystyle \frac{\partial Y}{\partial M} = \frac{I_i}{p\Delta} = (-)/(-) >0 } ……金融政策乗数はプラス

つまり、貨幣供給量Mが増加すると総生産は増加する。

例題2.2

古典派とケインズ

……労働市場と貨幣市場における相違

ケインズ体系

 I(i)=S(Y)  ・・・IS曲線…(貯蓄Sは総生産(と消費性向)に依存)

 L(Y,i)=M/p・・・LM曲線(貨幣供給は総生産Yと利子率iに依存)

 N=F^−1(Y)・・・雇用関数

 F’(N)=w/p・・・古典派の第一公準(これはケインズも認める) 

 w=w0

古典派

 I(i)=S(i)

・・・貸付資金説(貯蓄Sが消費から独立し、利子率のみに依存 貸付資金供給は利子率の増加関数、貸付資金需要は利子率の減少関数)

 MV=pY・・・貨幣数量説(貨幣供給は利子率から独立)

 Y=F(N)・・・生産関数

 Y’(N)=w/p ・・・古典派の第一公準(実質賃金は限界生産性と一致するところで決まる)

 N=Nf ・・・古典派の第二公準(一般均衡では完全雇用が実現する)



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