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1.相互作用の伝播速度

 読み物的な性格が強い節です。数式も出てきません。アインシュタインの相対性原理について書いてあって、大まかにまとめると
・相対性原理(あらゆる基準系で自然法則は同一)
・相互作用の伝播速度は有限で、ある最大値c≒3.0×10^8 m/sをもつ(光速度)
ということです。普通の相対論の本だとマイケルソン・モーレーの実験についてある程度説明するのですが、潔く「光の速度がその伝播方向にまったくよらないことを示した」と、たった2行程度で終わっていますね。何はともあれ、光の速度は一定で、そのため絶対的な時間というのが逆にあり得ないという話です。
 さて、ここからいよいよ「理論物理学教程シリーズ」の本領発揮ですよ…!

2.世界間隔

 いきなり「世界間隔」から始まるんですね(・_・; 他の本を見ると、まずはローレンツ変換を物理的な要請から導いて、その後にこの概念を導入するんですけどねぇ…ではローレンツ変換を本書ではどう定義してるんでしょうか?それは後々のお楽しみですね。
 まだローレンツ変換を知らない我々ですが、それでも世界間隔が慣性基準系によらないと示しています。5p.から6p.にかけての議論です。順序としては
・まず、ある慣性基準系で世界間隔が0ならばほかの慣性基準系でも0である(∵光速度不変の原理)
・上のことと、dsとds'が同じ次数であることからds^2=ads'^2という比例の関係であると示す
・aは二つの基準系の相対速度の大きさで決まるはずだが、3つの基準系を考えてみるとaは定数にならざるを得ない
・しかも、上で考えた関係式からa=1になる
 なんというか、「参りました」って感じですね。こういう、予想外のところからの攻撃にあふれているのが本書の魅力なんじゃないかなと思っています。初学の段階で読むより、一度ほかの教材で勉強してから改めてこの本を読んだ方が味わい深さも段違いだと思います。
 あとは「時間的」「空間的」に離れている、という状態についても述べられています。この本が採用している世界間隔の表式は

と、-1が多いほうなので世界間隔が正だと時間的に、負だと空間的に離れています。意味合いとしては以下のようになります。
・時間的…基準系をうまく選ぶと2つの事象を同じ点で起きるようにはできるが、同時に起きるようにはできない。「過去」と「未来」が絶対的なものであり、因果関係が定義できる。
・空間的…基準系をうまく選ぶと2つの事象を同時に起こせるが、同じ点で起きるようにはできない。「過去」と「未来」が基準系によって変わるので、因果関係が定義できない。
詳しくは7p.の図なんかも参照してください。

3.固有時間

 次は「固有時間」というものについて説明しています。第1節で時間が慣性基準系によって変わってしまうということを学びました。これではすべての慣性基準系の時間を1つの時計で支配することができなくないわけですが、その代わりに各々の基準系に時計を与えて、自分たちで勝手に時間を管理させようというのが「固有時間」の発想です。アインシュタインはこのことについて「私は全宇宙に時計を置いた」と述べたそうです。

具体的には、次のようなことを考えます。
・系Sから見ると速さvで動いている物体がある
・系S'はその物体とともに動く慣性基準系である
このとき、第2節から系Sと系S'において世界間隔が等しいということが分かっているので

(dx'=dy'=dz'=0であるのは、系S'が物体とともに動く座標系だから)

であることと、dt'が固有時間の微少変化dτに対応することから

となります。2点重要なことがあって、①dτ=ds/cとも書ける(式変形なんかで結構つかう。こう書くとdτも基準系の取り方に依らないことが分かるだろう) ②dτはdtよりも小さい、すなわち「動いている時計は止まっている時計より遅く進む」
 特に2つ目の結果について誤解が生じやすいような気がするので補足します(僕も学び始めの時はこの勘違いをしていた)。系Sから見ると系S'に固定された時計は遅れていますが、逆に系S'から系Sに固定されている時計を見るとどうなるでしょうか。普通に考えたら遅れいているの逆で「早まっている」と答えるのが正し気がしますが、実はこれは間違いです。系S'から系Sの時計を見ると動いているのはむしろ系Sの時計であり、そのため系Sの時計の方が遅れて見ええます(そもそも基準系の取り方によって時間の進み方の相対的な関係が変わってしまったら相対性原理に反してしまうでしょう)。
 これらのことは矛盾をきたしてはいないでしょうか?そのことが本書9p.から10p.にかけて議論されています。(ここからはまだ執筆中)
 ところで、この章で初めて登場して、今後も当たり前の言葉として登場する「トラジェクトリー」という言葉ですが、「軌跡」という意味です。普通に翻訳できる言葉なのですが、なぜわざわざカタカナにしているのでしょうか…?

4.ローレンツ変換

 さて、いよいよ慣性基準系の間での変換規則を求めてみましょう。どのようにして決めるかというと、世界間隔を不変に保つようにして決めます。そのような変換は回転に似たような変換になります(実際回転は世界間隔ではなく距離を不変に保つ変換です)。そこでxt平面の"回転"は


と書かれます。納得いかない人はxy平面の回転が


で表されることを考えてもらえればわかりやすいと思います。
 もうすこし具体的に考えましょう。x,tを系Kの座標、x',t'を系K'の座標とし、系Kから見た系K'の空間座標の原点を考えます。このとき、x'=0であるので(空間座標の原点を考えているのでt'=0ではない)


これら2式の比をとると、左辺はx/ct、系K'の系Kに対する相対速度をVとするとV/cとなります(書き忘れましたがVの方向にx軸をとります)。一方で右辺はtanhψになります。これからcoshψとsinhψを計算することで系K'と系Kの座標変数の変換が得られます。


こうして得られた変換をローレンツ変換と言います(この式は上の式と食い違うように思えますが、それは上の式を作るときには系K'の空間の原点に式注目していなかったからです)。
 この変換の逆変換を得るにはVを(-V)に置き換えればいいです。系Kから見て系K'が速度Vで動いているとき、系K'から見ると系Kは速度(-V)で動いていると考えられるからです。
 このようにこの本では「世界間隔を不変に保つ変換」としてローレンツ変換を定義しています。しかし、ほかの本をあたってみるとこの定義を用いている本はあまりなく、むしろローレンツ変換を物理的な要請から導き、その上で世界間隔が不変であることをその帰結としているものが多いです。その際の物理的な要請というのをここに紹介しておきます。
・光速度が不変
・逆変換ができる
・変換が線型である(「逆変換ができる」に含まれているという考え方もできる)
この辺のリンクも参考にするとよいと思います。
「EMANの物理学」より
yとzが変換を受けない理由についてもきちんと触れています。本稿はあくまでも輪読のレジュメであるためその話をするのは本来の趣旨と外れると考えたためここでは議論しませんでしたが、そこが気になった方がいらっしゃったらここを見てみるとよいと思います。
「FNの高校物理」より
数式をごちゃごちゃいじくるのが物理っぽくなくて気に入らない、という方はこちらの方があっているかもしれません。かなり違ったアプローチからローレンツ変換を導いています。

 この後は、動いている物体は長さが縮んで見えるという、いわゆる「ローレンツ短縮」の話が出ています。これは、物体の両端を同時に観測しているから起こる現象ですね。体積についても、動いている方向のみに短縮が起きるので、長さと同じだけの比率で変化します(すべての方向に短縮が起きるわけではないので「相似比の3乗」のようにはなりません)。電荷密度などを議論するときにもこの考え方を使うので、頭の片隅に入れておくとよいでしょう。

5.速度の変換

 前節では二つの慣性基準系の座標変数がどう変わるかという話をしました。この節では、二つの慣性基準系での速度がどう変換されるかという話をします。前節で得られたローレンツ変換を微小な変位と時間に置き換えて比をとれば速度の変換則が得られます。また、この本には載っていませんがtanhの加法定理

とx方向の速度の変換則

が似ていることも示唆的ですね。ψやφが"回転角"みたいなものに対応するということが分かればこれも納得の結果ではないでしょうか。

 あとは座標系を変えたときに斜めに動いているとき、その方向がどの程度変わるのかという話が出てきています。ここまで細かく書いてある本もなかなかないですね。

6.4元ベクトル

 今後使っていく数学の道具「テンソル」についての節です。調べると厳密な定義はいろいろ難しそうなことが書いてありますが、僕自身が勉強している範囲では、次のような条件を満たすもの、と考えるだけで良さそうだなと思っています(数学的な裏付けを自分でつけていないので、これが正しいのかはわかりません)。
・テンソルは行列の一般化である。行列は2次元の箱に数字を並べているが、テンソルに関しては必ずしも2次元にする必要はない。添え字が3個以上あってもよい。
・ただ数字を並べただけではテンソルとは認められない。座標変換について次の性質を満たしている必要がある。なお、共通する添え字に関しては実は式の頭にΣ記号がついているものとみなし、0~4までの和をとるものとする。

(この上付き、下付きの添え字はなんだ、と思われるかもしれません。上のような変換規則を満たすかで上付きか下付きかが決まっていると考えてください。それだと堂々巡りになると考えるかもしれませんが、そんなことはありません。テンソルの各添え字には変換規則が2種類ありえて、どちらかに合わせて上付きと下付きを決めているのです。上付きの添え字を反変成分、下付きの添え字を共変成分と呼びます。名前の由来はこちらもご参照ください。
「物理のかぎしっぽ」より
とくに二番目のルールはなんだかピンとこないと思いますが、まずはテンソルの特別な例、ベクトルについて考えるとよいでしょう。2次元のベクトル(x,y)がx'=ax+by,y'=cx+dyという変換を受けたとしましょう。そのとき、書き方を変えると


などと書くことができ、xをx^1,yをx^2と書くと


これを先ほどの「共通の添え字は和をとるルール」(縮約、という名前がついているので以降その名前で呼びます)を用いて書くと

となります。ただしここではαは1と2の間を走るものとします。
(執筆中)

7.4次元的な速度

とりあえず演習問題の解答だけでも載せておきます。
第7節の演習問題
図も載せておきましょう(本来は文章の方に載せたかったが、texで画像がうまく扱えなかった)。赤い線がNewton力学の結果、青い線が相対論の結果です。wt<<cのときに相対論の結果がNewton力学の結果にとても似ていることが分かるかと思います。

7-1

加速度小さめ

7-2

加速度大き目

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